デザインと印刷の意外な関係。発注前に知っておきたい紙選びと加工の基本

コンテンツデザイン部 S.T

Design&paper

チラシやパンフレット、会社案内などを制作する際、「印刷はデザインができてから考えればいい」と思っていませんか?

実は、印刷に使う「紙」や「加工」の選び方は、デザインそのものの方向性や仕上がりの印象に大きく関わっています。マーケティングや広報の立場で制作を担当する方にとっても、基本的な知識を押さえておくことで、伝えたいメッセージをより効果的に届けることができます。


紙や加工は、デザインの一部

たとえば、企業の信頼感を打ち出す高級感のあるパンフレットには、手触りに特徴のある特殊紙や厚みのある紙が効果的です。一方、イベント告知のフライヤーなどは、光沢感があり発色のよいコート紙や、落ち着いた雰囲気を出せるマットコート紙が適しています。

コート紙:表面に光沢があり、写真やグラフィックを鮮やかに見せたいときに向いています。カラフルなデザインや、華やかな印象を持たせたい場合に最適です。

マットコート紙:光沢を抑えたしっとりとした質感が特徴で、落ち着きや上品さを演出したいときに適しています。文字が多いパンフレットや、高級感を求めるツールにもよく選ばれます。

特殊紙:表面の凹凸、パール、透明感など、独自の加工が施された紙。紙の素材感を活かして高級感や個性を演出できます。

 

 

また、「紙の厚み(紙の重さ、kg表記)」も重要な要素です。一般的な目安としては、下記の通り用途や与えたい印象によって、適切な厚みを選ぶことが仕上がりの質を左右します。

  • チラシやDMなど軽く扱いやすいもの → 四六判90kg〜110kgが目安
  • パンフレットや会社案内など、しっかりとした印象を与えたいもの → 四六判135kg〜180kgが目安
  • 高級感を出したいカードや招待状など → 四六判220kg以上が目安

 

 

さらに、型抜きや箔押しなどの加工を加えることで、視覚的・触感的にインパクトを与えることが可能です。ブランドの世界観や訴求したいターゲット像に合わせて、紙と加工をデザインの一部として計画することが大切です。以下、代表的な加工をいくつかご紹介(弊社実績)します。

  • 型抜き:用紙の形を工夫したいときや、切り取り式のクーポンなどに活用されます。下記参考実績:コンセプトのNEXT STAGEに沿って矢印型に表紙をカットしました。
加工サンプル-型抜き
  • 箔押し:金や銀、カラーフォイルを熱で圧着させる加工。高級感やインパクトを演出できます。下記参考実績:特別なイベントの招待状には高級感のあるマットシルバーの箔押しを使用しました。
加工サンプル-箔押し
  • UV厚盛り(透明インク):印刷物の上に紫外線で固まる透明インキを使い、立体感やツヤを出してメリハリの効いた高級感を演出できます。下記参考実績:社内向けツールでは特別感が得られるよう表面にロゴを分解したマークを透明インクで印刷しました。
加工サンプル-UV厚盛り

よくあるすれ違いと、その防ぎ方

印刷仕様を後回しにすると、「想定より安っぽく見えてしまった」「紙が薄くて、ペラペラに感じる」「加工の効果が思ったより目立たなかった」等のすれ違いが起こりがちです。これらは、最初の設計段階で紙や加工を考慮していないことが原因のひとつです。特に、Webや映像用にデザインされたビジュアルをそのまま印刷に流用しようとすると、色味や質感に違和感が生まれることも。印刷物特有の条件を理解し、目的に合った仕様を早い段階で検討することが、成功の鍵です。また、実際の用紙を使った印刷サンプルで、印刷後の仕上がりを事前に確認する「色校正確認」を工程に入れることも重要です。


発注前に確認したい3つのポイント

  • 配布シーンとターゲットのイメージ:展示会で配るのか、営業訪問で渡すのか。誰に、どんな印象を持ってもらいたいかを明確にしましょう。
  • 印象に残したいキーワード:「信頼感」「高級感」「親しみやすさ」など、伝えたいイメージに合った紙・加工の方向性を整理しましょう。
  • 予算と部数:同じデザインでも、紙や加工によってコストは大きく変わります(一度にたくさん印刷する程1枚の単価は下がります)制作物ごとに費用対効果を見極める視点も重要です。

印刷仕様の選択は、単なる“仕上げ”ではなく、“デザインの一部”。制作の最初の段階から印刷までを一貫して考えることで、ブランドの魅力をより正確に、効果的に伝えることができます。弊社では、デザインと印刷の両面からご提案し、意図に合った最適な表現を一緒に考えます。気になる制作物があれば、ぜひお気軽にご相談ください。