空間に映像を組み込むと人の記憶はどう変わるか
コンテンツデザイン部 S.O
          昨今、展示やイベントでは、ただ物を見せるだけではなく人の感情や記憶に残る体験をいかに作るかが重要になっています。視覚や空間の演出は、単なる装飾に留まらず、人の心に深く刻まれる“体験”を形作る大きな要素です。
視覚体験が記憶を支配する
私たちが体験を思い出すとき、まず浮かんでくるのは「映像的なシーン」であることが多いと言われます。人間の感覚の中でも視覚は最も情報量が多く、記憶の大部分を担うからです。静止した空間デザインが「印象」を与えるとすれば、そこに映像が加わることで「動き」や「時間」が伴い、体験はより強い記憶へと変わります。展示会やイベント会場で印象的だったシーンを振り返ると、空間そのものよりも、光や映像による演出が心に残っていることは少なくありません。

記憶に残る映像演出の種類
空間に映像を取り入れる方法にはいくつかのアプローチがあります。ひとつは「インパクト型」。大画面のLEDやプロジェクションマッピングで強い驚きを与える方法です。初見の刺激は短時間で人の注意を惹きつけ、強烈な印象を残します。次に「没入型」。壁や床、天井に至るまで映像を展開し、来場者を包み込むような体験を生み出すものです。人は五感を通じた没入体験を記憶しやすく、まるでその世界に入ったかのような体感が長く残ります。そして「ストーリー型」。ブランドの世界観や商品の価値を物語として映像に織り込み、空間全体と連動させて伝える手法です。単なる派手さではなく、感情やメッセージを伴うからこそ、意味のある記憶となります。
映像を活かすために必要なこと
ただし、映像を空間に設置するだけでは十分な効果は得られません。大切なのは、その空間が果たす目的との整合性です。展示会なら「商品の強みをどう理解させるか」、イベントなら「ブランドの世界観をどう体験させるか」。目的が明確であればあるほど、映像の力は効果的に働きます。また、映像は視覚だけでなく「時間」をデザインできる点も重要です。静止したグラフィックが一瞬で情報を伝えるのに対し、映像は流れを持つことでストーリーを生み出します。その時間的な体験が、人の心に“思い出”として残るのです。

まとめ
空間に映像を組み込むことは、単なる演出の追加ではなく、体験を「記憶」に変えるための仕掛けです。インパクト、没入感、ストーリー。これらを目的に応じて設計することで、来場者は空間そのものよりも「その場で体験した瞬間」を鮮明に思い出すようになります。私たちクリエイティブ部門は、そうした“記憶に残る体験”を生み出すことを常に意識し、空間と映像を掛け合わせたデザインを追求しています。