クライアントの「本当に解決したい課題」を引き出す“ヒアリング”

コンテンツデザイン部 A.S

デザインプロジェクトにおいて、「クライアントの要望通りに制作したのに、最終確認で方向転換が求められた」という経験は少なくありません。この原因は、“ヒアリング”の際にクライアントが「解決策」を求めているにも関わらず、「真の課題」を聞き出せていないことにあります。

デザインは「問題を解決するための手段」です。そして、その問題の核心を突き止めるのが、第一関門。今回は、表面的な「欲しい」の奥にある「本当に解決したい課題」を引き出すための、具体的な「ヒアリング方法と、必ず聞くべき項目」をご紹介します。


1. “ヒアリング”は「情報の収集」ではなく「対話による課題定義」

”ヒアリング”は、単なる要望の聞き取りではありません。クライアントが「言葉にできていなかった思い」をスムーズに引き出し、私たちとクライアントの間に共通の「羅針盤」を作るための課題定義のプロセスです。

まずは、デザインプロジェクトの土台となる基本的な「3つのW」の問いかけで、共通認識を築きます。

Who】ターゲット(誰に届けたいか?)

◾️質問の核: ペルソナ、具体的な行動様式、そしてインサイト(顧客の隠れた動機や心理)を掘り下げます。

◾️質問の意図: 制作するデザインが、「デザインのトーン&マナー」をどのような方向性で設定すべきかを決定するための羅針盤とします。

What】制作物の役割

◾️質問の核: 制作物が「誰に」「何を」させるためのものか、という具体的な機能や利用シーンを確認します。

◾️質問の意図: デザインにおける「要素の優先順位」を明確にします。情報の配置を決定する基準となります。

【Goal達成目標

◾️質問の核: 最終的にプロジェクトを通じて「どうなってほしいか」という目標、すなわちKGIやKPIを具体的に特定します。

◾️質問の意図: 完成した「デザインの良し悪し」を客観的に判断するための共通の評価基準を設けます。「かっこいい」といった主観ではなく、客観的なゴールを設定するために不可欠です。


2. 真の課題を引き出す「3つの深掘りメソッド

基本情報だけでは、真の課題は見えてきません。以下の3つのアプローチで質問を重ねることで、クライアント自身も気づいていない「本当に解決したいこと」を掘り起こしましょう。

深掘りメソッド①:過去の「敗因」から学ぶ

目的: クライアントが潜在的に避けたい要素を特定する。

質問テクニック: 過去の成功事例ではなく、失敗事例について尋ねる。

【例えば…】「これまでの販促物で、効果が薄かったものがあれば教えてください。その敗因はどこにあったと分析していますか?」「他社に依頼した際、最も困った点(納期? クオリティ? コミュニケーション?)はどこでしたか?」

【着目点】 ここで特定した「失敗要因」を、今回のデザイン戦略で意図的に避けることを保証することで、クライアントの安心感を高めます。

深掘りメソッド②:競合との「相対的な強み」を聞き出す

目的:クライアントの「選ばれる理由」=「核となる価値」を明確にする。

質問テクニック:「比較」と「限定」の質問で、本質的な強みを絞り込こむ。

【例えば…】「仮に価格も品質も同等だとしたら、競合他社ではなく、御社をあえて選ぶ理由は何だと思いますか?」「業界内で、御社が唯一『これは負けない』と自信を持って言える点は何ですか?」

【着目点】 曖昧な回答であれば、「その強みをビジュアルでどう表現するか」というデザイン戦略を具体的に提案し、単なるかっこよさではない訴求力の高いデザインを設計します。

深掘りメソッド③:組織の「意思決定構造」を明確にする

目的:プロジェクトの終盤での手戻りリスクを排除する。

質問テクニック:評価者と評価基準について具体的に尋ねる。

【例えば…】「最終的なデザインのOKを出す方はどなたですか? その方は、どのような基準でデザインを評価されますか?」「デザインの提案前に、社内で共有すべき情報や事前にクリアすべきルールはありますか?(例:社内規定の配色ルール、など)」

【着目点】 意思決定者の価値観や暗黙のルールを事前に把握し、デザインの方向性がブレないように、かつスピーディに承認を得るための道筋を作ります。


まとめ

“ヒアリング” は最高の「リスクヘッジ」であり「設計図」

まとめると、“ヒアリング”の質はそのままプロジェクトの成功率に直結します。これらの深掘り項目と方法で、クライアントの頭の中にある「本当に解決したい課題」が明確になれば、デザインの目的がブレることはありません。

質の高い“ヒアリング”は、最高の「リスクヘッジ」であり、デザイナーが迷いなく走れる「設計図」です。これらの技術を実践し、クリエイティブの可能性を最大限に引き出してください。

本記事でご紹介したヒアリングメソッドが、実際にどのような成果に繋がっているのか、
ぜひ弊社の実績ページでご確認いただければ幸いです。
あなたの課題解決のヒントが、きっと見つかるはずです。

【実績紹介】