【要注意】デザインフィードバックで「言ってはいけない」NGワードと建設的な伝え方
コンテンツデザイン部 M.O
はじめに
デザイン制作の現場では、クライアントやディレクター、営業担当者などからデザイナーへフィードバックを行う機会が多くあります。
しかし、フィードバックの言い方次第で、デザイナーのモチベーションや成果物の質に大きく影響します。
今回は、デザインの品質を高めつつ良好な関係を保つために、「フィードバック時に避けたほうがよい言葉(NGワード)」と、代わりに使える建設的な伝え方をご紹介します。
なぜ“言ってはいけないワード”があるのか
・抽象的すぎる表現や感覚だけの指摘では、どこをどう直すべきかが見えづらくなってしまいます。
・相手の責任をぼかしたり、判断を丸投げするような言い方は、作業の効率を下げる原因になります。
・意図がうまく伝わらないと、全く別の方向性のデザイン案が上がってきて、結果的にやり直しにつながることもあります。
フィードバックの言葉は、次の修正に向けて“何をすべきか”を共有するための大切な手がかりです。 その手がかりが曖昧だと判断が難しくなり、結果的に手戻りが増えてしまいます。
よくある NGワード & 建設的な代替表現
NGワード1:「いい感じにしてください」
【問題点】
人によって解釈が異なり、具体性に欠ける
【代替表現】
「ブランドに信頼感を与える落ち着いた印象にしたい」
「若年層向けに親しみやすさを重視した感じにしたい」
NGワード2:「前の方がよかった」
【問題点】
“前案”のどこが良かったかが不明確
【代替表現】
「前案の青緑の色使いが落ち着いていてよかった」
「前のレイアウトの余白が広めで読みやすかった」
NGワード3:「なんか違う」
【問題点】
感覚が共有されず、改善ポイントが曖昧
【代替表現】
「もう少し軽やかな印象にしたい」
「情報が突出しすぎて見づらく感じる」
NGワード4:「とりあえず派手に」
【問題点】
何を強調すべきかがブレる
【代替表現】
「最重要情報(タイトルなど)を強調色で目立たせたい」
「アクセントカラーを少し強めてメリハリを出したい」

NGワードを減らすためのフィードバックのコツ
・目的/ゴールを明確にする
フィードバックを始める前に、自分がそのデザインに何を求めているかを整理しましょう。
たとえば「ブランドの信頼性を高めたい」「問い合わせをもっと増やしたい」
「読みやすさを改善したい」など。
・感覚ではなく根拠を伝える
「なんか違う」などの感覚的な指摘だけで終わらせず、なぜそう感じるのかを言語化します。
感情 × ビジネスゴール × ユーザー視点を結びつけて伝えることで、
デザイナー側も改善の方向性を把握しやすくなります。
・ 具体例を出す
参考画像や過去のデザイン、他社事例を使って
「こういうトーン」「こういう余白感」「こういう強弱」が理想、という具体像を共有します。
・建設的な質問を使う
「指示」だけでなく対話のきっかけにする
例:「ここをもっと強調するとしたらどうアレンジできますか?」など。
・フィードバックをドキュメント化/整理する
修正依頼や意見を箇条書きにして整理し、デザイナーとすり合わせたうえで修正フェーズに入る。
口頭だけだと抜け漏れが生まれやすいためです。
フィードバック文化を育てるために
良いフィードバックは、個人のスキルだけでなくチームが共有する“文化”によって支えられます。私たちが社内で行っている勉強会やワークの取り組みを例に、文化づくりのポイントをまとめました。
① 小さな学びの場を積み重ねる
フィードバックがうまくいかない原因の多くは、前提の違いや言葉のズレです。
勉強会では以下を実施しています。
・情報整理の仕方のレクチャー
・デザイン意図の言語化トレーニング
・参考画像の探し方のコツ
・架空クライアントを用いたフィードバック資料作成演習
・「分からない」を共有して解決するパネルディスカッション
こうした場を重ねることで、チーム内の共通言語が自然に増え、
日々の積み重ねがチームの型になっていきます。
② デザイナーへの理解を深める
デザインの理解は、見るだけでは不十分です。
そのため勉強会では、非デザイナーにも Illustrator体験型ワークを取り入れています。
Illustratorを操作すると、例えば
「このズレを直すのにどれだけ手順が必要か」
「文字位置を調整するだけでもどれくらい時間がかかるか」
「余白を整える作業が全体の印象にどれほど影響するか」
といったデザインの裏側の作業量を体感できます。
この体験により、単に「なんか違う」と言うのではなく、
どのレベルで指摘するとデザイナーが動きやすいかを感覚的に掴めるようになります。
さらに、「普段の業務で疑問に思っていること」を共有するセッションを行うことで、
非デザイナーでも違和感を具体的に言語化する力が自然と身につきます。
③ 成果を振り返り、学びを共有する
振り返りはフィードバック文化の定着に重要です。
勉強会では「フィードバック前 → 改善後」を比較する、実践演習を行なっています。
この振り返りにより、参加者は フィードバックでデザインが良くなった成功体験を得られ、
より良いフィードバックをしたいという意識が自然に高まります。

おわりに
NGワードを避けることは目的ではなく、
もっと建設的で、もっと成果につながるコミュニケーションに近づくためのプロセスです。
私たちが行っている勉強会やワークは、まさにその文化を育てるための“土壌づくり”でもあります。
・前提をそろえる場づくり
・デザインの理解を深める体験
・成果の振り返り
今後も上記を続けながら、チーム全体で「伝わるフィードバック」の質を高めていければと思います。